三宅砂織『影色 2』
開催概要
- 会期
- 2026年09月12日 〜 2026年10月11日
- 会場
- WAITINGROOM (東京都文京区水道2-14-2 長島ビル 1F)
- 参加クリエイター
- 三宅砂織
- ジャンル
- アート
- タグ
- ミクストメディア、サイアノタイプ、映像、オープニングレセプション
開催内容
WAITINGROOM(東京)では、2026年9月12日(土)から10月11日(日)まで、三宅砂織の個展『影色 2』を開催いたします。当ギャラリーでの三宅の個展は、約3年ぶりとなります。三宅は、物体の影を写し取るフォトグラムや日光で感光させるサイアノタイプ、それらの写真技法をタイムベースドメディアへと拡張した映像作品など、多様な素材や技法を横断しながら、イメージが共有される過程で抽出される「絵画的な像」に関心を寄せてきました。2023年にWAITINGROOMで開催された個展『Nowhere in Blue』では、サイアノタイプの手法を用いて「どこでもない(ように見える)」風景を生み出しました。そして、昨年ARTRO(京都)で開催された個展『影色』では、条件によって相対的に知覚される影と色に共通性を見出し、色について探求するサイアノタイプと映像作品を発表しました。これら2つの個展での試みを引き継ぎながら、さらなる展開を見せる本展では、ネガポジ反転と調色の手法を用いた新作映像作品と、新作のサイアノタイプ作品を発表します。サイアノタイプでは、 デジタルイメージを拡大することで現れるグリッドに実際の植物の影を重ね、さらに手彩色を施しています。ユニークな手法で「見る」行為の心象性を浮かび上がらせてきた三宅が描き出す、影と色の新たな関係性を、ぜひこの機会にご高覧ください。
作家・三宅砂織について
1975年岐阜県生まれ、2000年に京都市立芸術大学大学院・美術研究科を修了。現在は京都を拠点に活動中。三宅はこれまで、さまざまな経緯で出会った既存の画像をネガポジ反転させて透明シートに描き、それを感光紙の上に重ねて露光することで、ドローイングの「影」を印画するフォトグラムの手法に取り組んできました。カメラによって一度対象化された世界に目を向けることから導き出されるイメージは、物語性や断片性、多層性を詩的に浮かび上がらせ、膨大な量のイメージが氾濫する現代において、「見るという行為」を身体的な行為だけでなく、心理的な現象としてもとらえられると作家は考察しています。近年では、フォトグラムの制作を通して深めた思考を反映した映像作品や、日光で感光させるサイアノタイプにも取り組みながら、人間がさまざまなものに眼差しを向け、それを画像化し、共有された画像にさらに新たな眼差しが重なっていく営みの中から、「絵画的な像」を抽出する試みを続けています。近年の主な展覧会として、2026年グループ展『青と、―うつろう場』(AOTO Art、兵庫)、2025年個展『影色』(ARTRO、京都)、グループ展『第4回 PATinKyoto 京都版画トリエンナーレ』(京都京セラ美術館、京都)、2024年グループ展『AWT VIDEO「飛行機雲か山脈か」』(三井住友銀行東館1Fアースガーデン、東京)、グループ展『ゲバルト : 制度の暴力に対する抵抗の変遷』(東京日仏学院、東京)、2023年個展『Nowhere in Blue』(WAITINGROOM、東京)、グループ展『アーバン山水β』(kudan house、東京)、2022年グループ展『ミラーレス・ミラー』(gallery αM、東京)、2021年個展『アーティスト・イン・ミュージアム AiM Vol.9 三宅砂織』(岐阜県美術館アトリエ、岐阜)、2021年グループ展『奥能登国際芸術祭2020+』(石川県珠洲市全域、石川)、2019年個展『庭園|POTSDAM』(SPACE TGC、東京)、グループ展『MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影』(東京都現代美術館、東京)、2018年グループ展『第20回 DOMANI・明日展』(国立新美術館 企画展示室2E、東京)などが挙げられます。また、2016年『京都府文化奨励賞』、2011年『咲くやこの花賞』美術部門、2010年『VOCA賞』などの受賞や、東京都現代美術館、兵庫県立美術館、和歌山県立近代美術館、アーツ前橋、京都市立芸術大学へのパブリックコレクションの収蔵など、幅広く活躍している作家です。
影と色が重なり合う場所
バウハウスで教鞭を取り、色彩と形態の関係について研究を重ねた美術家・教育者のジョセフ・アルバースは、色が相対的に知覚されることを明らかにしました。色が私たちの精神世界において生み出されるならば、三宅の言う「絵画的な像」のように、色もまた、多声性と相互性を孕みながら人と人との間で共有され、循環すると考えられます。
映像作品とサイアノタイプによって構成される本展において、三宅はこれまでのモノクロやブルーの世界に、意図的に「色」を挿入します。ネガポジを反転させるこれまでの手法に調色の要素を加えた新作映像作品では、特定の場所を想起させるシーンと、ここではないどこかを想像させるシーンが混ざり合うように映し出されます。この「どこかにあるが、どこかはわからない」風景は、特定の対象と特定の色との結びつきを一旦切り離し、色を別の回路へと結び直すことで、より豊かな物語性を帯びていきます。光と影が反転し、影であるはずの部分にも色が施されたこの映像は、影に色を見るという経験を通して、情報を俯瞰的に捉えるのではなく、むしろ目を閉じて人間の精神世界へと立ち帰ることを促すようです。
一方、太陽光で印画し鉄塩の化学反応によって青く発色するサイアノタイプは、植物学者のアンナ・アトキンスによって、植物標本の影を写し取る当時最先端の技術として活用されました。その原初的な手法を辿るように、三宅の新作サイアノタイプでも、実際の植物の影が写し取られています。植物の影に組み合わされるのは、複数のデジタル画像を拡大し、そこに現れるグリッドを重ねた抽象的なイメージです。極端に拡大されたイメージは、日常的な鑑賞の距離感を離れ、イメージの内部へと深く潜り込んでいくような経験をもたらします。そして、自然物としての植物とテクノロジーがもたらす超越的な視点が共存する青の世界に、三宅は手彩色を施します。対象を記録するテクノロジーとしての写真に、手彩色という絵画的なアプローチを重ねるこの手法は、人間がテクノロジーやシステムにいかに応答し、両者がどのように相互に変容していくのかを可視化する試みといえます。
本展において三宅が描こうと試みるのは、テクノロジーの発達が一層加速する現代において、私たち人間が獲得し始めている新しい「像」です。それはSF的な欲望を伴う理想世界ではなく、必然性を孕んだリアリティといえるでしょう。このように三宅は、可視と不可視の領域を並置して扱いながら、それらを観察し、描写し続けているのです。