家村ゼミ展2026「空間に、自然光だけで、那須佐和子の絵を置く」

開催概要

会期
2026年10月03日 〜 2026年10月26日
会場
家村ゼミ(多摩美術大学芸術学科 展覧会設計ゼミ) (東京都八王子市鑓水 2-1723 多摩美術大学 八王子キャンパス アートテークギャラリー1階)
参加クリエイター
那須佐和子
ジャンル
アート
タグ
東京都の展覧会、個展、絵画

開催内容

【「家村ゼミ展」とは】
多摩美術大学美術学部芸術学科・家村先生ゼミ(展覧会設計)は、一年を通じて作家と協働し、「家村ゼミ展」をつくりあげることを目標としています。展覧会は、完成した姿だけを指すわけではありません。本ゼミでは、大学という教育・研究の環境のなかで、明確な解を導き出すことよりもむしろ、考え続けながら試行錯誤を重ねる姿勢を大切にしています。こうした制作の過程も含め、我々は「家村ゼミ展」をひとつのアート・プロジェクトとして捉え、展覧会設計に取り組んでいます。
2017年度以来、アート・プロジェクト「家村ゼミ展」は毎年1本ずつ、作家、そして学部3年と4年の学生たちと行われてきました。これまでに行われたのは、「髙柳恵里×髙山陽介×千葉正也」展、 泉太郎の個展、 「日高理恵子 村瀬恭子 吉澤美香―ドローイングから。」 展、 「金 氏徹平のグッドベンチレーション —360°を超えて—」展、 「今年は、村田朋泰。—ほし 星 ホシ—」、 「中村竜治 展示室を展示」、「空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く」、「空間に、自然光だけで、大竹利絵子の彫刻を置く」「中村竜治 空間に、自然光だけで、フィルムを置く」の9本です。
2015年に八王子キャンパス内に設けられたアートテークギャラリー1階(約560m2、一部天井高9m)を会場としています。

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【「空間に、自然光だけで、那須佐和子の絵画を置く」について】
10 回目となる 「家村ゼミ展 2026 」 では、 「空間に、自然光だけで、那須佐和子の絵を置く」を開催いたします。

4年前に開催した「中村竜治 展示室を展示」は、本展の会場であるアートテークギャラリーが、展示空間として設計された空間ではあるものの、ガラス面が多く外光が空間に大きく影響するという、展示空間としては特異な性質を備えていることを気づかせてくれた展覧会になりました。以来、「空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く」、「空間に、自然光だけで、大竹利絵子の彫刻を置く」、「中村竜治 空間に、自然光だけで、フィルムを置く」と、人工光を用いず 、自然光だけによる展覧会を継続して開催してきました。

今年の「空間に、自然光だけで、那須佐和子の絵を置く」も、その延長線上に位置付けられる展覧会です。ただし今回は、これまでとは大きく異なる点もいくつかあります。まず 、展示構成の出発点として、那須の要望により、アートテークギャラリーにベニヤ板を設置することになりました。これまでの「自然光だけ」の展覧会では、ギャラリーそのものにはあえて手を加えず 、既存の空間をそのまま受け入れることを前提としてきました。その環境のなかに作品や物質を置き、空間と作品が、時間、天候、状況に応じてどのように変化していくのかを観察することによって、これまで見えていなかったものに気づくことを大切にしてきたからです。それが、このシリーズで大切にしてきたことでした。今回は、その前提に対して、作家自身の意思による「設え」が加わることになります。
また、那須は、これまでのシリーズで協働してきた作家とは異なり、今年30歳を迎える若い作家です。美術館での展示経験もまだ多くありません。しかし那須は、幼少期を演劇一家のなかで過ごし、舞台美術や演出に携わった経験を背景に、約560m2、一部天井高9mにも及ぶアートテークギャラリーの空間に、臆することなく向き合っています。大きな空間を単に背景として扱うのではなく、そこにどのように絵画が立ち上がるのかを、独自の感覚で果敢に探ろうとしています。
さらには、今回は「色彩」が重要な要素となります。これまで取り上げてきた作品や物質は、いわゆる色彩を伴ったものではありませんでした。それに対して、那須の絵画は、薄く重ねられた油彩の色彩の層によって、風景や人物を描くことを特徴としています。自然光の移ろいのなかで、その繊細な色彩の層がどのように変化するのか。その変化は絵画の内部にとどまるのか、それとも空間全体へと広がっていくのか。自然光のもとで立ち現れる色彩のあり方も、本展の大きな見どころです。
今年の展覧会もまた、那須佐和子の個展であり ながら、単に一人の作家の絵画を自然光のもとで見る場にはとどまりません。光と翳、空間、絵画、天気、時間、音、そして居合わせる人々の振る舞い。それらが絶えず関係を結び直しながら、一人ひとり、個々の目と身体が異なる体験・体感を立ち上げる場となるでしょう。

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【本展の特徴】

1.自然光のある空間、アートテークギャラリー
展示を行うアートテークは一部天井高9mの4つの空間で構成され、約560m2の展示空間の採光を自然光のみとすることで、人工の灯りのなかでは見えない、空間と作品の関係性を探ります。
壁や床、天井、置かれた絵に柔らかく反射し、構造の異なるそれぞれの空間を接続する自然光は時間帯や天候によって繊細な変化を見せるため、展示もまた豊かな表情を見せます。ぜひ日や時間を変えて訪れることで、その変化を楽しんで頂きたいです。

2. 今年度の新たな試み
家村ゼミは、2022年度のゼミ展「中村竜治 展示室を展示」をきっかけとして、2023年度「空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く」から2025年度「中村竜治 空間に、自然光だけで、フィルムを置く」まで、空間と自然光と作品という環境を引き継ぎ、そのなかに見えるものを探ってきました。
再びその環境を引き継いだ今年度のゼミ展ですが、これまでとは異なる新たな試みを行います。今年30歳を迎える若い作家である那須佐和子は学生との新鮮な反応を見せ、那須と家村ゼミがともにつくる展示もまた、これまでとは異なる新たな表情を見せています。そして那須自身の提案により、作家の私物であるベニヤ板を展示空間に置くことで、これまで干渉してこなかった自然光に初めて操作を加えることとなります。新たな表情を見せるアートテークの空間に展示される12点(予定)の作品は全て、今回の展示のために新たに制作されたものです。家村ゼミ展が迎えた変化が、これまで見つめてきた空間と自然光、作品の関係性に新たな視点を与えます。

3. 作家と学生の協働
家村ゼミでは作家、学生、教員が話し合いながら展覧会を作っていきます。今年の活動では作家や作品について理解を深めるため、学生が作家のアトリエを訪問しました。作家にとってアトリエはとてもプライベートな空間であり、作品だけでは見えてこない面も垣間見えます。他者に見せない作家も多いため、貴重な機会となりました。
また、展覧会を作る過程で数回に分けて実験を行うことも、家村ゼミの大きな特徴です。自然光を用いる家村ゼミ展では、その日の天気や時間によっても見え方が大きく変わります。そのため実際にアートテークに作品を置き、それぞれがどのように感じたか、意見を交換します。作品の配置や数、展覧会のテーマなどを、実験を通して模索していきます。
今年度は3回の実験を行う予定で、7月末には最後の実験を行います。前回の実験では実際に作品やベニヤ板、釘を空間に配置することで、ゼミ生たちがそれまで掴み切れていなかったイメージや作家の意図を身を持って実感することができました。実験で得た新たな展望や疑問を踏まえて生まれた新しいアイデアを持ち寄り、最後の実験に向けて準備を進めています。

4. 今年の鑑賞の視点
2023年度のゼミ展「空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く」と2024年度のゼミ展「空間に、自然光だけで、大竹理恵子の彫刻を置く」、2025年度のゼミ展「中村竜治 空間に、自然光だけで、フィルムを置く」におけるテーマのひとつは、鑑賞者に展示室で過ごしてもらうということでした。
2023年度のゼミ展では、「展示空間で30分間過ごす」という大学院の授業が行われ、2024年度のゼミ展では鑑賞者に座布団を渡して展示空間の好きな場所に座ることを促す工夫を行いました。2025年度のゼミ展では、看視員はただ立っているだけでなく、地面に置かれた透明のフィルムと壁の間に座って看視を行うなど、これまでの試みは所謂展示室での振る舞いとは異なるあり方へのきっかけとなるよう、考えられました。

今年の展示をつくるなかでも、作品を含んだ空間のなかで鑑賞者の在り方をどう考えるか、ゼミとしてのテーマを決めることとなりました。那須佐和子という作家のあり方やそこから生まれるアートテークギャラリーでの展示の姿から、ゼミ生のなかでは昨年までの「過ごす」とは異なるテーマにするべきだという声が上がっています。ですが、今年のゼミ展はまだまだ形づくられていく道中にあり、那須による作品制作も日々行われています。家村ゼミの特徴である、試行錯誤を重ね、常に変化し続ける姿勢のもと、展示の姿を探りながら今年の展示テーマの模索が続けられています。

家村ゼミ展2026「空間に、自然光だけで、那須佐和子の絵を置く」