中島崇 Stroke
開催概要
開催内容
物質の表面を執拗に追究し、空間そのものの知覚を更新するインスタレーションで注目を集めてきた中島崇。
本展では、その新たな展開として、「ステンレス」という素材に向き合う作品を展示いたします。
作家がこの素材に取り組み始めて 3 年半。試行錯誤を重ねるなかで到達したのは、鏡面に仕上げたステンレスバンドを折り曲げ、歪ませることで立ち上がる「立体の絵画」ともいうべき表現です。作品には、光、環境、反射、実体、影、支持体といった複数の要素が緊密に関わり合い、空間に新たな視覚体験をもたらします。
作品は周囲の環境を取り込みながら光を複雑に反射し、従来そこになかった陰影を空間に生み出します。鑑賞者は、その変容した場に身を置くことで、空間の知覚と自己の位置をあらためて見つめ直すことになるでしょう。
同時期に開催される入善町下山芸術の森発電所美術館(2026 年 6 月 27 日(土)~9 月6 日(日))での展示では、窓から差し込む自然光がストレッチフィルムのストロークを通して「光と時間の形」を浮かび上がらせます。これに対し、本ギャラリーでの展示では、制御された照明が生み出す光の乱反射とステンレスバンドの緊張感あるストロークによって、場そのものを描き出す試みが展開されます。
ステンレスが備える自己修復性や、酸化を通じて化合物(錆)へと移行しようとする性質は、自然と人工の境界に立ち現れる現象を想起させます。光を捉え、時間を物質へと変換する二つのアプローチを、ぜひこの機会にご高覧ください。
私の表現は、本来「モノ」を包み守るための梱包資材を、空間そのものに再定義するためのメディウムへと転換する試みです。 この行為は、対象を傷つけまいとする保護の純粋な衝動が、空間を埋めるような執拗な反復を経て、過保護なまでの過剰さへと変容するプロセスを内包しています。 これは、あらゆるリスクを排除しようとする現代社会の潔癖な時代性への批評であり、同時に自身の内面にある境界への執着の露呈でもあります。 美術史におけるミニマリズムや もの派の系譜を継承しつつも、私は物質の重力から解放されたインスタレーションによって、事としての場という空間を創出します。 そこでは、光の屈折と透過が鑑賞者の身体的経験と交差し、実体のない「場」が立ち上がります。 展示の終わりと共に消滅するこの一過性の空間表現は、固定された物質ではなく、変容し続ける事象としての芸術を提示するものです。
ー中島崇