竹村 京 うごくせかい

開催概要

会期
2026年07月25日 〜 2026年10月12日
会場
水戸芸術館現代美術ギャラリー (茨城県水戸市五軒町1-6-8)
参加クリエイター
竹村京
ジャンル
アート
タグ
ミクストメディア、インスタレーション

開催内容

竹村 京は、時間の流れや人・物の移動、天変地異、偶然の出来事など、さまざまな要因によって揺らぐ世界のなかで、「縫う」という行為によって対象に新たな光を与える作品を制作してきました。友人の幸せな生活を等身大で写し取り、その一部を縫い留めることで地震にも負けない保管のかたちを模索した初期作品《A.N. のリビングルーム、地震の予感》(2005 年)をはじめ、写真やドローイングに布を重ねて刺繍する平面作品や、壊れた日用品を布で包み失われた部分に沿って独自の「修復」を行う立体作品、緻密な運針のなかに時間の流れや世界との交感を表した「Time counter」など、その関心は一貫して、個人の記憶や出来事を作品のなかに「仮留め」し、一つひとつの存在を現在から未来へとつなぐことへと向けられています。
竹村にとって過去最大規模の個展となる本展では、2000 年代の代表作を起点に、「修復」を施した作品群や、「天災」と「修復」を主題とした新作インスタレーション、水戸の街なかで参加者が「修復」の意味を考え、実践するワークショップなど、その多彩な創作から、記憶と喪失、時間や行為における不可逆性といったテーマへと迫ります。
今日の世界は、価値や真偽が容易に反転し、現実との向き合い方に戸惑うほど不安定な状況にあります。世界を支えるのは変転か普遍か、過去・現在・未来の変遷のなかで、わたしたちは何を引き受け、何を受け渡していくのか。本展は、揺らぐ世界への応答を続ける竹村の作品を通して、出来事やその記憶との向き合い方について、ともに考える機会となるでしょう。

【展覧会の3つのポイント】
1.日常から災害まで、縫う行為を通して移り変わる世界と向き合う現代美術家・竹村京による、過去最大規模の個展

竹村 京(1975年東京都生まれ)は、壊れてしまった物や失われていく場所、個人的な記憶など、忘却や淘汰のなかに埋もれてしまいそうな存在に目を向け、「縫う」という行為によって新たな光を与える作品を制作してきました。日本最古の刺繍作品とされる「天寿国曼荼羅繍帳」との出会いをきっかけに、絹糸で縫う行為とドローイング、写真、ファウンド・オブジェなどを組み合わせた独自の表現を展開。グローバル化と情報化が加速する現代社会において、あえて身近な人物や出来事に根差した制作を追求し、「第 15 回シドニー・ビエンナーレ」(2006年)をはじめ国際的な舞台で高い評価を得てきました。
2015年に帰国してからは、ポーラ美術館(2018年)、群馬県立近代美術館(2019年)、「ヨコハマトリエンナーレ 2020」など国内の主要な美術館や国際展で発表を重ねるほか、京都国立近代美術館での「『CONNECT⇄_』身体感覚で楽しむプログラム 竹村京『Floating on the River』」(2021~2022年)では、身体的・感覚的な関わりを通して鑑賞者と交流するプログラムにも取り組んできました。
本展は、竹村にとって過去最大規模となる個展です。2000年代初頭から現在までの代表作・新作を通して、平面、立体、インスタレーション、パフォーマンスに至る、その多彩な実践を紹介します。
また、本展のために制作される 2つの新作では、「記憶」「修復」「災害」「家」といった主題が有機的に交差し合う、その表現の新たな展開を見ることが出来るでしょう。日常のなかの些細な変化から天変地異まで、絶えず揺れ動く世界に対し、自らの手で縫うという極めて身体的な行為によって向き合い続ける竹村の創作にぜひご注目ください。

2.揺れ動く世界と向き合う2つの新作

本展では、「地震」を主題とした 2 つの新作を発表します。
新作《May i enter?, all things move》は、展示室内に宙吊りのガラス窓を出現させるパフォーマンスとインスタレーションによる作品です。古代の記憶術「記憶の宮殿」の逸話を起点に、災害と隣り合わせにある日本の風土や、その中で繰り返される破壊と再生、開発と反復の営みへと意識を向ける本作は、これまでの作品で扱われてきたテーマを引継ぎながらも、竹村の表現の新たな展開を見せる作品となるでしょう。
もう一つの新作では、能登半島地震を契機に廃棄された黒瓦に注目します。厳しい自然環境下で人々の暮らしを守ってきた能登の瓦は、地震による落下だけでなく、被災後の家屋の解体や街の再建の過程でも大量に失われたと言います。竹村は、災害に伴うこれらの葛藤に目を向けながら、蛍光シルクを用いて瓦に「修復」を施すことで、その存在に光を当てるとともに、行為における故意と不可抗力の境界、そして時間や出来事の不可逆性を示唆する美しい作品へと昇華します。
なお、本展で披露される能登の瓦を用いた新作は、能登半島地震によって生じた九谷焼や珠洲焼のかけらを素材として用い、工芸家やアーティストの技術によって新たな表現の可能性を探求する Rediscover project by CACL の協力で実現に至りました。(Rediscover project by CACL https://rediscoverproject.jp/)
(協力:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、群馬県産業技術センター、株式会社CACL)

3.「修復」を通した問いかけ

竹村は、壊れた物や失われた部屋の一部を作品のなかに縫い留める自身の実践を「修復」と呼びます。竹村の「修復」は、割れたグラス、ひびの入った皿、使い古されたブラシ、壊れたおもちゃなど、日常のなかで役割を終えた品々を透け感のある布で包み、その上から刺繍を施すことで行われます。一般的な修理のように元の状態に戻すのではなく、制作を経て「壊れることを体験した貴重な存在」として提示される品々は、それぞれが辿ってきた時間や経緯を想像させ、私たちと私たちを取り巻く物質世界との関係を静かに問い直します。
本展では、竹村が「修復」した作品を展示するとともに、竹村による「修復」の作品を手掛かりに、市民や街が「修復」について考えながら参加する交流プログラムを水戸商工会議所との共催で実施します。同プログラムでは、参加者の身の回りで起きた出来事にまつわる品物や写真を募り、参加者自身が「修復」を行って、そのエピソードとともに展示します。さらに、地域で実践されているさまざまな「修復」の現場を訪ねながら、「修復」することの意味や方法、移り変わるものとの向き合い方について、多様な立場から考え、ともに考えを深める機会を創出します。

竹村 京 うごくせかい