大坪美穂展 海界(うなさか)2010 -インスタレーションを中心に-
会期: 2010-07-03 - 2010-09-26
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
インスタレーション
開催内容
『海界』をメインに『黒いミルク』『サイレント・ヴォイス』という三つのシリーズで構成。いずれも幾つもの小さな部分(〈こより〉や〈布玉〉など、単純な手作業を根気強く繰り返してかたちづくられたもの)が連なって大きな一つを形成しています。
大坪美穂は、これまでの歩みの中でたくわえられた様々な命の記憶(身近な人の死・多くの犠牲をともなったテロや戦争)に、ヌーラ・ニー・ゴーノルやパウル・ツェランの言葉にひきよせられながら〈かたち〉を与え、平和へのを祈りをささげています。
山の中の小さな木造空間にこの夏限りであらわれた海にたゆたって、自分の内側に呼びさまされる感覚に身をゆだねてみてください。
一見平和にみえる日本の周囲はキナ臭いテロや紛争があちらこちらで起きていて、この光景は少女時代の私の中の風景と重なり、人々が日常生活をうばわれて、死んで行く現実を見過ごすことはできません。 私は戦後の荒廃した街の風景の中で育ちました。
東京の街に溢れる傷痍軍人、物乞いの人々の群れ、焼けた建物の残骸、赤土の原っぱ。街は再建のエネルギーに満ちていましたが、この茶色い風景は私の原風景となって、瞼にやきついています。 今回の展覧会はアイルランドの女流詩人ヌーラ・ニー・ゴーノルの詩「イムラム/航海譚」(大野光子訳詩)から発想を得ています。
ヌーラ・ニー・ゴーノルは神話の世界をかりて、現代に生きる人々の不安や精神世界とりわけ社会的に弱い立場にいる女性の側から、ゲール語で詩を書いているアイルランドを代表する国民的詩人です。 この展覧会ではヌーラの詩の断片をイメージして、世界各地で起きているテロや紛争で死んでいった子供たち、女性たちの無念の思いを残された人たちの悲しみと重ね合わせ、多くの方々の古着で作った布玉、7000本の和紙のこより、80脚の椅子を使って、平和を祈るメッセージをインスタレーションで表現します。 展覧会のワークショップでは、身につけていた古着、身近な家族の遺品の衣類等も持ち寄りその方たちを偲びながら「祈りのかたち」の布玉を作り、展覧会の作品作りに参加していただくことで、平和祈念のメッセージを共に発信していきたいと思います。
さまざまな年代の方に一人でも多く参加していただきたいと思っております。 私は一人の表現者として今の時代を生きる人々の不安や悲しみ、希望を形にすることで私自身も生きているリアリティを確信するものでありたいと願っています。
- 大坪美穂