「Big sleep」 curated by 今井俊介
開催概要
- 会期
- 2025年04月19日 〜 2025年05月10日
- 会場
- Masumi Sasaki Gallery (東京都江東区新大橋3-17-10 水野ビル1F)
- 参加クリエイター
- 中田さつき / 木下令子
- ジャンル
- アート
- タグ
- 平面、絵画
開催内容
この度、MASUMI SASAKI GALLERYでは、4月19日(土)より「Big sleep」 curated by 今井俊介を開催します。本展覧会は現在のアートの動向を知ることを目的として、気鋭のアーティストおよび美術関係者をキュレーターとして迎える展覧会シリーズです。
初回のキュレーションを務める今井俊介は、アートのみならずデザインの要素も取り入れながら鮮やかな抽象絵画を描くアーティストで、近年は東京オペラシティアートギャラリーや丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で大規模な個展を開催するなど、国内外で活躍を続けています。独自の感覚で自身の作品を制作するかたわら、大量の展覧会鑑賞を通じてアートについての思索を続ける今井は、木下令子と中田さつきによる作品を展示し、「時間」と作品との関係に光を当てます。
木下令子は布のドレープや紙の皺や折り目にスプレーガンを用いて着彩する作品や、日常の光で印画紙を感光させて色彩を生み出す作品などを制作します。素材の性質に拠 って制作されるそれらの作品は、木下が選択する素材の特性と、移りゆく時間の経過とを明らかにします。
中田さつきは武蔵野美術大学油絵学科を卒業後、2018年に同大学院を修了しました。隣人の死に感じた死のリアリティを元に作品を描き続けている中田は、死と向き合う人物や動物、主人が死んだ後に残され育ち続ける植物の様子などを幻想的かつ内省的に描き出します。
二人の作品を見つめるうちに「Big sleep」(大いなる眠り・永続する時間)という言葉が思い浮かんだと今井が語るように、木下は穏やかに素材に関与して時間を留めることで、中田は死後の場面を醒めた目線で想い描くことで、時間を作中にとりあげます。今井俊介氏がキュレーションを手掛ける本展覧会は、現代のアーティストが時間という概念をどのように作品に取り入れるのか、という芸術を鑑賞する際の一つの視座を鑑賞者に提供します。
下記、今井俊介氏によるコメントです。
ギャラリーから展覧会の企画をしませんかと話しをもらったときに、すっと頭に浮かんだのが木下令子と中田さつきの作品が並んでいる光景だった。
それがなぜなのかと言われるとよくわからないのだが、ふたりの作品が並んでいるのを自分が見てみたいと思っただけなのだろう。共通点なんかよくわからなかったし、そもそも全く違う美術へのアプローチをしているこのふたりの作品のことを考えていたら、なんとなく眠り・時間・永遠とか死について考え始めている自分がいた。
確実にあったであろう時間を留めるように画面に定着させる木下令子。
瞬間を記憶するように布の皺を画面に留める作品は、いろいろなことや経験を心に刻む作業のようであり、時間を止めてしまったかのような状態をつくり上げる。印画紙に絵の具の飛沫を吹きかけた作品は絵の具が乾くとともに固定されたかのように見えるが、印画紙は光を浴びて永遠に感光し変化し続ける。それは無意識のうちに時間だけが過ぎていく深い眠りのようなものではないのか。
死の先には何が起こるのか。誰も答えを持ちようがないことを暗闇の中を覗き掘り出すように絵にする中田さつき。隣人の孤独死を経験したことで、自らの死に際やその前後について思いを巡らせるようになったという。
重くなりがちなテーマを少しくすんだ色味で描いてはいるが、滑るような筆致でさらっとした絵画として着地させるのは、死を大きなこととは捉えず、毎日必ず訪れる眠りと誰しもに必ず訪れる死は何ら変わりのないものだと考えているからなのかもしれない。
などと考えている間にレイモンド・チャンドラーの「大いなる眠り」(原題はThe Big Sleep)というタイトルが頭によぎったので、この展覧会を”Big sleep”と名付けよう。
分かりやすさや流行を追わず、淡々と作品に向き合うふたりの、派手さはなく落ち着いたトーンの作品が並ぶ空間に立つと、永遠に続く時間のなかに、確かに在る静かな瞬間に立ち会うような感覚になるのではないかと期待している。
今井俊介