金子 直道/シノブ・キイ/升谷 絵里香 映像作品展 この揺りかごを -If I could-

開催概要

会期
2025年02月07日 〜 2025年02月20日
会場
ソニーイメージングギャラリー (東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階)
参加クリエイター
金子直道 / シノブ・キイ / 升谷絵里香
ジャンル
写真
タグ
映像

開催内容

近年は毎年のように「今年の夏は今までにない暑さですね」という言葉を交わすようになりました。そして大雨の激しさが極端になる等、様々な形で私たちの生活にも変わりゆく気候の影響を感じるようになっています。

本来は南の海に棲む魚が関東の海でも見られるようになったり、さらに南の海ではサンゴの白化現象が広がったりする等、生き物たちの暮らしにも気候の変化による影響が現れています。

これらは日本だけで見られるのではなく、世界のあちこちの海や山や森でたくさんの生き物が環境の変化によって種の危機に直面している、棲むところを変えなければならなくなっている、と言われています。

また、日本では札幌のような大都市にもヒグマが現れたと報じられ、様々な地方でイノシシやシカの姿が場所によっては人里でしばしば見られるようになる等、人と生き物との関係性にもお互いの生活が影響を及ぼし合うようなニュースも目にします。

大規模な森林伐採や宅地開発、工場や高速道路の建設等、人が生き物の暮らす場所を壊してしまう事が今も世界のどこかで絶えず行われています。

人や生き物はこれからもこの地球で生き続けていくことができるのでしょうか。 わたしたち人は生き物と互いに影響を及ぼし合い過ぎないようなやり方を見つけ生み出し、この地球で共存し続けていくことができるのでしょうか。

身近なところで起きていること。 そして、今見えていないことを想像すること。 もしわたしが何かできるなら。

(本展覧会は「第14 回公募セレクション作品」です。)


■金子 直道(かねこ なおみち)
映像作品タイトル
『三月の雪』

雪が降ると静けさを感じる。これは音の振動が雪の隙間に吸収されるからだ。私はこの静けさが好きだ。
昨今、雪が降らなくなったと感じる。20232023年末から20242024年初頭の冬は暖冬だった。短期的な大雪こそあれ、北日本側の降雪量は平年よりも少なく、桜の開花は全国的に遅れた。季節のあり様が変化していることを身近に感じるようになった。
気象庁のシナリオでは、20762076年から20952095年には日本の大半の地域で、年最深積雪と降雪量は大きく減少すると考えられている。その減少率は2020世紀末と比べて77割にも及ぶ。
本作品では不可逆である自然の営みを逆再生にすることで、この美しい現象を未来に残したいという願いを込めた。

『風から生まれた』
カメラを持って外に出たとき、私が心惹かれたものは海原に揺れる月の光や、風にそよぐ草花、川のせせらぎの音や、木漏れ日で生じる陰影だった。それらは天候や生き物との関係によって姿形や音を変え、常に賑やかで、ゆるやかで、自由だった。絶妙なバランスの世界。お互いがお互いを見て、聞いて、呼応している。変化し循環する様を静かに眺めているうちに、私はその中に溶けていくような感覚があった。
私はこれを作品にしたいと思った。
量子力学ではこの感覚を「ゆらぎ」と呼ぶそうだ。光のゆらめきも、風の強弱も、私たちの鼓動や呼吸も「ゆらぎ」の性質を持っている。こうしたゆらぎの性質に脳が呼応したとき、私たちは心地よさを感じるのだという。 そして、私たちが住む宇宙も、その起源にはそよ風のような「ゆらぎ」があり、そこから宇宙が生まれたと考えられている。
同じ性質を共有する私たちは、風から生まれた宇宙の子どもだと言えるかもしれない。

■シノブ・キイ
映像作品タイトル
『The First 54 days (of pigeon pigeon’s life) 』
初夏のある日、突如ベランダに鳩の卵が一つ産み落とされた。翌日にはもう一つ。一般的に鳩は「鳥の巣」を作らないが、このつがいは子供部屋たる巣の土台にこだわり、枝を集め自らの羽を飾った。出産の苦しさや子育てにクタクタになり思わず寝落ちし、日々羽色がやつれていく夫婦の姿と、好奇心豊かに艶やかに育っていく子供達。約10 年とも言われる鳩の一生のうち、誕生から巣立ちまでの”鳩生”最初の54 日間の記録。

『始まりで終わりの場所』
日本で最も身近な鮭「白鮭」の遡上から旅立ちまでの数ヶ月を追った。白鮭は都会から人里離れた大自然まで、産卵に適した川であれば遡上し子孫を繋ぐ力強い魚だ。川で誕生した鮭は数センチの小さな体で北方の海へ旅立つ。約4 年後、成熟した鮭は産卵のために産 まれた川に帰るが、着く頃には卵や精巣(白子)を収めるために胃が消える。体に蓄えたエネルギーと精神のみで遡上し、全身で石を退けて産卵し、やがて川底に消える。開発によって帰るべき川は減少し、気候変動や人間の消費、密漁を乗り越えて大きく成長した鮭だけが、生まれた川と一つになれるのだ。

■升谷 絵里香(ますや えりか)
映像作品タイトル
『アシミレイト』
自然との一体化を試みたパフォーマンス作品。 アイスランドのミールダルスヨークトル氷河では、小石が転がる音や、崩れ落ちた氷が水面に触れる瞬間が静かに響き渡る。人の気配が遠のいたこの大自然の中、時に圧倒的な恐怖を覚えながらも、作者は自然と同化することで安堵を見いだそうと試みる。

『キラウシカムイ』
日本の北部に位置する北海道は、豊かな自然とともに、複雑な文化や歴史を持つ地である。 撮影の舞台となった北東部の野付半島には、古くからある伝説が語り継がれている。 その伝説を元に、エゾシカが歴史の流れと交錯しながら、野生動物と人間の共存をメッセンジャーが案内していく。

『アルゴリズムによる記述を超える:野性の実践』
多くの文化や歴史の中で、シカはメッセンジャーとしての役割を担ってきた。そのシカが私たちに届けようとするメッセージとは何だろうか。 その答えを探るために、まず私たちはシカと波長を合わせる試みを始めた。波長を共鳴させることで、シカの視点から見える景色が徐々に浮かび上がる。

金子 直道/シノブ・キイ/升谷 絵里香 映像作品展 この揺りかごを -If I could-