笹川治子 Haruko Sasakawa 「case.A」
会期: 2012-06-01 - 2012-06-17
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
映像・映画
インスタレーション
立体
平面
コンセプチュアルアート
現代アート
開催内容
この度、Yoshimi Artsでは、笹川治子の個展を6月と9月の2度にわたる会期で開催致します。また、7月に行われる「ART OSAKA 2012」でYoshimi Artsの「PLUS」というブースにてワンマンショーを行います。
男の子達は、強くなりたい一心で世の中の進化への夢を見、夢を実現する為に、壮大な意志と労力をつぎ込み、犠牲をも厭わず、進歩という思想を持って突き進んできました。3.11以降、私達が見ている福島原子力発電所の廃墟は、男の子達の思想と現実が脆くも制御不能に陥った状況が可視化されたといえます。荒廃した福島原発のビジュアルは、60年代から頻繁に劇画等で物語の行く末として描かれた終末風景が、地下鉄サリン事件と同じく現実に現れた日が来たかのようです。笹川治子は「Pets」(2011)で、取り残されたペット達を木屑や新聞紙などでくみ上げ、その光景を露にしました。
日本において、女性が社会と対峙した時、未だに家父長制が横たわる社会と直面し、男の子達の神話が壁となって現れます。笹川治子の作品を見ますと、例えば、ロボットをビニールで制作した「うつろ戦士」(2009,2011)や、木製で骨格だけを露にした「アフターコンストラクション」(2011)など、その神話に対し皮肉めいているように感じます。
また、個人情報の問題が大きく取り上げられる昨今、私達は意識していない所で監視カメラによって日常的に監視されています。「セキュリティーシステム」(2009,2011)は、録画の機能を持ち合わせていない擬似的な物体で、鑑賞者に見る側でありながら見られることを意識させ、監視による安全神話に問いを投げかけています。
この世は、不完全な人間という動物と、完全な情報機会だけで完結している世界です。文化とは、不完全な人間が形成する社会に対し、無数にある情報を加工し、あらゆる素材を引き出して、神話にまで高めることであり、それが社会の不完全を代償する事になると考えられます。
笹川治子は、この社会で起こる出来事に対し批評的な視点を持ち、それらを記号的に可視化し、また、現象を様々な局面に置き直し、脱力的に表現することでリアリティーを表出する試みをしています。今回の個展では、「アドバタイズメント」の効力に着眼点を置いた新作で、平面・立体・映像によるインスタレーションを発表致します。