ノリ・モリモト展 森に魅せられて~バーモントの自然と生きる
会期: 2012-01-07 - 2012-01-22
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
立体
彫刻
現代アート
開催内容
このたびアメリカ在住50年になる日本人アーティスト、ノリ・モリモトの新作展をヒルサイドフォーラムにて開催するはこびとなりました。 モリモト(森本尚則)は、大連生まれで中学生のときに終戦を迎え、その後郷里の香川県坂出工業高校に学びました。豊かなアメリカ文化に惹かれて1960年渡米、やがて、ニューヨークでグラフィックデザイナーとしての地位を確立しました。しかし平面だけに飽き足らず、当時ニューヨークで親交を深めていたイサム・ノグチや猪熊弦一郎の影響もあり、いつか自分だけのアトリエで彫刻作品の制作に打ち込みたいとの夢を抱き、ようやくバーモント州ウォーターベリーに住居兼アトリエを構えたのが1987年、モリモト56歳の時のことです。以後、遅咲きのアーティストとして展覧会デビューを果たし、木と対話しながらの木彫レリーフ作品がバーモントから生まれ出ました。
モリモトの作品は25cm角、あるいは18cm角の木彫レリーフを中心にしています。バーモント州で伐採された楓、杉、アカマツなどの木材を吟味しながら選び取り、主に機械を使ってモチーフを掘り込んでいきます。時にはバーナーで表面を焼いたり、寒い日に木を凍らせてわざと割れ目をつくったり、清流の流れるアトリエ周辺の屋外で塗料を乾かしたり、厳しい自然環境での作業が続きます。木との格闘から生み出される形、その奥には若い頃ニューヨークで親交を結んだイサム・ノグチ、ジョージ・ネルソン、そして師と仰いだ猪熊弦一郎の影響が見え隠れするようです。「目的を持たず、無にむかって、その木片のもつ最も美しい三次元の形をつくってごらん」という猪熊の助言を、40年近く経った今もかみしめつつ試行錯誤を繰り返し、作家自身「思わぬミステークから新しい作品ができたときは何ともいえない喜びに満たされる」と語っているように、常に失敗を恐れずに作品に取り組む姿勢は、見る人を引き込みます。満州・四国・東京・ニューヨーク・バーモントーー様々な人々との出会い、そして自分自身との戦いが、200点のレリーフ作品1点1点に刻まれているのです。
木という素材の可能性を日米両文化からみつめ、作品を通じて発信し続けるモリモトのメッセージは、豊かな感性に満ちています。ぜひこの機会に作品をご覧いただけますようお願いいたします。
「ノリ・モリモト展によせて」
この度、戦後東京の最も成功した街づくりの地である代官山ヒルサイトテラスで畏友・森本尚則さんの作品展が開かれることになりました。
森本さんと彼の作品をヒルサイドテラス(朝倉徳道社長・朝倉健吾専務)とアートフロントギャラリー(北川フラム会長)に紹介させていただいた縁で展覧会の実行委員長を仰せつかりましたので、謹んで一言ご挨拶を申し上げます。
森本さんとであったのは、1971年、私がニューヨーク総領事館に勤務するようになって間もなくのことでした。先に妻が猪熊弦一郎画伯にご挨拶をし、知遇をいただいて直ぐに森本さんを紹介されたのでした。猪熊先生は妻の東京藝術大学の大先輩であり、森本さんと猪熊先生は同じ香川県のご出身というご縁でした。
それからというもの私は、森本さんと文字通り親交を重ねてきました。彼が勤めていたニューヨーク中心街のデザイン会社、ロングアイランドの住居と「クラバーン」と名付けたレストラン、さらにはバーモント州山中のアトリエ兼住宅と、ニューヨーク在勤時だけでなく帰国後訪米したときを含め、彼のいるところにはどこのでも出掛け、仕事ぶりと暮らしぶりを見ていつも感心していました。森本さんは一貫して粘り強く、勤勉に自分の表現の可能性を追い求めていました。
今回の展覧会で私たちは、彼の作品を目の前で見ることになります。ある時は緑がしたたり、ある時は紅葉で真っ赤に染まり、またある時は純白の雪に埋まるバーモントのアトリエで一年半程ひたすら制作してきたものです。作品は必ずや、古武士のようでいて同時にモダンなセンスをもつ彼の人間性が溢れたものになろうと確信しています。
どうぞご来場の皆さま方におかれましては、およそ50年前に日本を離れ、自分の眼と手だけでアメリカに挑んできた森本さんの「凱旋展」を温かく愛でていただきますようお願い申し上げます。
柳澤伯夫(ノリ・モリモト展実行委員会 代表)