金理有 展 『捨象美術』
会期: 2011-12-14 - 2011-12-30
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
クラフト
展覧会タグ:
フードセッション
トークイベント
レセプションパーティー
陶磁
開催内容
「横浜トリエンナーレ」で一躍脚光を浴び、今や推しも推されぬ若手陶芸作家の雄・金理有が今年の締めくくりに全館規模の個展を開催。
今展覧会は個展とコラボレーションの二つの要素でギャラリー全館を使用して「横トリ」未発表の近作・新作を多数出展。
会場内に特設の茶室も構え、茶人や文化人との交歓によっておもてなしの心が満ち溢れるだろう!
各分野で活躍する作家・クリエーターとの共演もお見逃しなく!!
(会期中の茶会などイベント情報は随時ホームページやフェイスブック等で告知致します。)
[開催者コメント]
ギャラリーニュートロン代表 石橋 圭吾
人は誰でも、超えなければならない壁がある。避けようとしても前にそびえ、退こうとしても背後に迫るその壁は、私が/あなたが誰であり何処に属しているかという定義からして確固たる決断を迫り、越境を許そうとしないものである。人種、宗教、政治的イデオロギー、文化、生活スタイル、居住地域や性別に至るまで、人間はそれぞれに固有のジャンルを選択させ、カテゴライズすることによって互いを確認しあう。世の中の概念を覆し新しい観点から視野を獲得すべき美術の分野もまた、例外に漏れずジャンル分けと棲み分けと、つまらないカテゴライズに満ち満ちている。
一方、インターネットで結ばれたもう一つの現実世界においては、匿名性と不可分性が許容される前提で壁は取り払われ、パスポートや検閲抜きに自由な交歓が繰り広げられる。そこに当然の様に潜む悪意のある攻撃性や無責任の連帯性を除けば、仮想現実は立派にこれからの世界を導くだけの素質は持ち得るだろう。しかしながら、SNS(ソーシャルネットワークサービス)で構築された新しい日常の現場において、私達が頼りにするのは相手がどこに住んで何をして、何を考えている人であるかという情報であり、まさにカテゴライズされ・パターニング(類型化)された私達の回路から導き出された答えによってしか、未知の相手と挨拶を交わすことすらしないであろう。だとすると仮想世界においては、実は現実世界よりも遥かに大きなウェイトが情報に置かれ、細分化されたパターンスポットに当てはまることが出来なければ、私達自身が存在することもままならないと言えよう。
そんな私達の世界において、仕切られた壁を軽々と超える事は努力よりも先に大きな勇気を必要とする。誰もが自由でありたいと願いながら実現が困難であるのは、即ち自由こそ本当の意味での恐ろしさを秘めているからであり、人間は潜在的に不自由の対価として安息を得ることに慣れてしまっている。だから周囲に高くそびえたつ黒い壁を認識しても、それを見ないフリをして私達自身が便宜上の「自由」を約束されている、私達自身は生まれながらに自由だなどと言う事が出来るのであろう。本当に自由を求めて彷徨う者、すなわち「越境する者」こそがその壁を越え、反対側の景色を眺め、いつ奈落の底に落ちるかも分からぬ足場の上で重力と精神的な浮力の間でダンスを踊ることが出来る。まさに唯一無二の、金理有のように。
彼にとっての2011年は今までの人生を全て賭してでも手に入れたいと思ったものが、一粒の宝石のかけらのように目の前に輝きを見せつけた一瞬のような一年であった。そして今なお、彼はその煌めきの中に包まれている。大抜擢された横浜トリエンナーレでは多くの美術ファンの認知と支持を獲得し、もはや陶芸界に留まらず美術本流の中で認められる現代作家の一人となった。その彼の出展作品は最近作から旧作に至るまで幅広い制作のバリエーションを見せたのだが、どれも「縄文時代と未来を繋ぐ」彼特有のシャーマニック(呪術的)かつシンボリック(象徴的)な造形の魅力を見事に体現し、その先へ続くものを期待させるに充分な展示となった。他方、同時期に横浜の現代茶室「SHUHALLY」で開催された個展&茶会では、現代の数奇人である主宰の松村氏の遊び心に呼応するように、彼のオブジェや器が来場者に新しい茶道の魅力を伝えていた。LED内蔵の朧に光る畳の茶室においては映像までをも駆使して、従来の固定観念化された様式美に大きな風穴を開けた感が漂う。まるで動かし難い巨人の足元に小便を引っ掛け、鼻の下に落書きをしてやったような爽快な気分である。
折しも先日、金理有の盟友であり最高のライバルである現代陶芸の雄・青木良太が開いたクラブパーティーを、青木自身が「現代の茶会」と称した様に、今や陶芸やお茶は最高のストリートカルチャーに変貌しつつある。HIP HOP に必要なのはリズムとライム(詩)だけであるように、現代の茶会には自慢の器と新しい美的価値観を愛でる心さえあれば良い。金理有にとっても日本にとっても大激震の年となった今年を締めくくるのは、誰も予想出来ない波乱と興奮と調和に満ちた最先端の茶会であり、個展である。
「越境する者」に安息の日は訪れない。絶えずどちらかの壁へ突き落とさんとする輩が現れ、足を引っ張る者も絶えない。しかし彼の行く先には、彼しか目にすることの出来ないフロンティアが待っている。私もまた、彼のオブジェが見開く大きな一つ目を心に宿し、目の前の壁を越えんとするばかりである。
[コンセプト]
捨象美術 / Art of abstraction
捨象とは、事物または表象からある要素・側面・性質を抽象するとき、他の要素・側面・性質を度外視することである。
今回の個展は、近現代の美術シーンの中で切り捨てられてきた要素を焼物というジャンルを基軸に再考察する試みとして開催する。
焼物のみでなく、映像クリエイターや写真家とのコラボも予定。
3階に茶室、2階に日本酒バースペース、1 階は金理有の個展となり、コラボレーションなど、自作を含め陶芸や表現を問いなおす展示を試みる。
KIM Riyoo Exhibition Opening Party
展示開催初日 12/14 (水) 18:00 ~ 20:00
neutron tokyo 2011年を締めくくるのは、今年大活躍の金理有!1~3階全フロアをジャックします!作家本人も参加のオープニングパーティーを開催。(入場無料・予約不要)
会場では、十名の陶芸作家の酒器を使用して、「ふしきの」店主の中村祐輔氏のセレクトによる日本酒&国産スパークリングワインのテイスティング企画もご用意しております。