イタリアの三日月 [luna crescente]

開催概要

会期
2021年02月27日 〜 2021年03月28日
会場
AZUMATEI PROJECT (神奈川県県横浜市中区長者町7-112  伊勢佐木町センタービル3階)
ジャンル
アート

開催内容

三日月とは陰暦三日の夜の月の事です。つまり月がその身を隠す新月(陰暦一日)の次の次の日の夜の月。新月の次の日の月はほとんど目視が出来ない故に三日月の訪れる日を太陰暦の時代には「新月」と言い、本来は「ついたち([月立ち/つきたち]が変化)」もこの新しく見える月(三日月)を意味しました。日没近くの西の低空に現れると太陽の後を追ようにすぐに沈んでゆく三日月の輝く面積は満月の僅か6%で光度は三百分の一。私たちが日本で三日月を見るその頃イタリアでは太陽が昼に向かって空高く登ろうとしています。誰も月の存在を気に留めません。イタリアで三日月が姿を見せるその頃、深い眠りにまどろむ私たちの夜空からはもうとっくに三日月は去ってしまっています。あなたは三日月を見た事があるでしょうか。あなたはイタリアの三日月を見上げた事があるでしょうか。__世界保健機関(WHO)によればコロナウイルスによる疾患であるCOVID-19のヒト初発例は2019年12月の中国武漢市から報告されました。しかし2020年11月17日16時50分にネット上に配信された国際ニュース週刊誌『ニューズウィーク日本語版』の記事は「ミラノにある国立がん研究所の研究によると、早いものでは2019年9月の血液サンプルから新型コロナウイルスの抗体が検出された。この知見により、『パンデミックのこれまでの経緯が書き換えられる可能性がある』と研究チームは述べている。」と報じています。私にこの事の真相がわかるわけもありませんし少なくともしばらくは誰にもわからないままなのでしょう。__私たちはちょこんと三日月に腰掛ける事は出来ません。日本の上空にもイタリアの上空にもあの輪郭をした物体が浮いているわけではないのです。月から地球までの距離はおよそ38万4400キロ。月の光が地球に届くには1.255秒かかる為に私たちの見る三日月は常に過去の三日月だと言いますが、果たして三日月に過去も未来もあるのでしょうか。__2020年の実際がどこまでどうだったのかわかりませんが、イタリアの美術はこれまで実に多くの観光客を惹きつけて来ました。ジョットやダ・ヴィンチ、或いはミケランジェロ・・《モナ・リザ》だってイタリアで描かれました。しかしもちろんイタリアの美術はルネサンスで始まったわけでも終わったわけでもありません。約四万年前のフマーネ洞窟では《角が生えたヒト》が描かれ、ポンペイの壁画はかつてこの街を襲った悲劇を代償に今も豊かな色彩を保ち、長い間に種々のキリスト教美術が生み出され、さらにトランスアバンギャルディアやアルテ・ポーヴェラ等の美術運動が多くの人を魅了して来ました。__コロナ禍であろうとなかろうと私たちは何もかもどれもこれもについてイメージする事が出来ます。しかし私たちのイメージとは一体誰が創造しているのでしょうか。実際に見たからそれが確かなものであると考えるのはロマンのある話かも知れません。実際に見なくとも確かなものだと信じるロマンも大切かも知れません。本展はイメージに彩られた私たちの世界のなりたちとこれからについて語る場です。いくら手を伸ばそうとも三日月には届かず、イタリアとの距離は延びるばかり。私たちは私たちの知るどの芸術の輪郭にもまたちょこんと腰掛ける事は出来ないのです。[文: 水谷一]


出品アーティスト:東亭順、白大 阝、大久保あり、五島一浩、土屋貴哉、水谷一

イタリアの三日月  [luna crescente]