中谷ミチコ 個展
会期: 2019-08-09 - 2019-09-01
参加クリエイター:
展覧会詳細
展覧会ジャンル:
アート
展覧会タグ:
オープニングレセプション
彫刻
開催内容
中谷ミチコ(1981年東京都生まれ)は、多摩美術大学美術学部彫刻科卒業後、ドイツ・ドレスデンに渡り、2010年にドレスデン造形芸術専門大学彫刻科を卒業。同年、VOCA展奨励賞受賞、2012-14年には文化庁新進芸術家海外研修で再びドレスデンに滞在、作品発表を重ねる。2012年ドレスデン造形芸術大学 Meisterschülerstudium 修了。帰国後は三重県を拠点に活動している。
中谷の代表作には、凹状に彫り沈めた石膏に透明樹脂を流し込んだ半立体のレリーフ作品が数多くあり、近年評価を高めている。一般的にイメージするモチーフが盛り上がっているレリーフとは異なり、凹凸が反転したこの作品は、彫られた空虚があたかも実在するように見える不思議な作品だ。
最初のドイツ留学の際に生まれたこの作風は、慣れない異国の地で孤独と向き合い描きためたドローイングからスタートしている。それらのドローイングを前に「絵のようなピュアなイメージを保つ彫刻は作れないか」と、模索するうちに生まれた手法がこれである。従来の彫刻が物質的で強い存在感を放つハッキリとした印象であるのとは異なり、「そこにあるのに、ない」ようなドローイングの中の存在感を忠実に表現している。柔らかく、あいまいで、中立的な気配を漂わせると同時に、中に彫り沈められたモチーフからは、強い意志を感じさせる作品だ。
今回のアートフロントギャラリーでの展示では、等身大のマスクのレリーフと、⿊い透明樹脂の立方体の新作シリーズを発表予定。無色の透明樹脂が流し込まれた等身大マスクのレリーフは、鑑賞者が作品の内部に視線を這わせるうちにイメージの内部に取り込まれる不思議な感覚を覚える。と同時に、透明な樹脂によってそこには手が届かない拒絶を経験する。これは中谷が、ドイツでこの表現に出会ったときに彫刻の雌型を眺めて感じた「心がざわざわする」違和感を疑似体験することにもなるだろう。もう一方の⿊い樹脂の立方体の作品では、闇夜から切り出したような立方体の中に、イメージが照らし出される新作シリーズを展開。存在の在りかと不在性をより深く問う新しい試みの作品になる。また、作家の原点ともいえるドローイングも展示予定。中谷の世界を存分に味わえる展示となるだろう。
同時期に、中谷は三重県立美術館(2019.7.6-9.29)にて大規模な個展も開催する予定だ。彫刻家、柳原義達の記念館全体を使い同館が所蔵する柳原の作品とあわせて展示する。独自の表現だけでなく、中谷が10代の頃に影響を受けた先人作家、柳原義達と向き合いさらに思考を深める取り組みはとても興味深いものとなっている。
更なる経験を積んだ中谷がアートフロントギャラリーで魅せる最新作の展示に、どうぞご注目ください。