Sign A は、おもに実際に存在する浮世絵を流用した、ステンシル・グラフィティやペインティングの作品を制作しています。流用、美術用語で言えばアプロプリエーションとは、既製の絵画や写真からそのままのイメージを持ってきたり、明らかに流用元が分かる状態で作品に用いる手法です。
Sign A の作品においても、引用元は明らかで、浮世絵好きであれば一度は目にしたことにあるような有名な図から、人物が切り離され、トリミングされ、改変されて提示されています。
また、流用元は浮世絵に限らず、そのタイトルなどにも映画や音楽の有名作品から、また、背景のスプレーステンシルにおいては、現代のバンクシーを筆頭とするステンシル・グラフィティの作品を想起する表現が用いられています。80 年代に成立したアプロプリエーションが美術史において持つ意味とは、オリジナリティへの批判ですが、Sign A は浮世絵をモチーフにすることで少し異なるアプローチをしています。
江戸・明治時代において、浮世絵は単なるアート作品ではなく、ファッション誌・プロマイド・ニュース・広告・玩具も含んだ総合メディアでした。描かれているモチーフには、ちょっとした「謎掛け」が仕掛けられ、背後に別の意味や関係性が隠されていることが少なくありません。江戸の浮世絵師や版元たちが絵に込めたこれらの謎掛けは、和歌や俳諧などの文学、日本の歴史、歌舞伎、地方の地理や風俗などを踏まえたもので、幅広い教養があって初めて、作品の本当の意味を知ることができるものでした。つまり、浮世絵におけるアプロプリエーションでは、既存の作品が尊重され、鑑賞者もそれを知っているという前提があるのです。
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