奥天昌樹は美術史によって解釈される範囲よりも広く普遍的な感覚で人々が触れることのできる表現に取り組んでいます。
変形した作品は異物のような存在感と物質感を与え、鑑賞者が矩形のフィールドから解放された絵画空間に飛び込むことを可能にする役割も担っています。
「5歳未満の幼児の落書きに原始的な線を感じた」と述べる作家は幼児期の他者の落書きを存置し、マスキングにより画面深部から最前部までの絵の具の階層を貫く白い線として表出します。この工程の理由を作家は「描画材が生まれる前の線の成り立ちは轍や傷のようなものであり、線というのは凹凸になっているのが自然である」と語っています。
作家の作品は人物の気配だけが焼きつけられた不在のポートレートのようでもあります。これは画面に描いた他者の痕跡を純度の高い状態で見てもらいたい姿勢の現れであり、作者は一連の制作で自身の存在を作品から消していくアプローチをしていますが、どこか生きた痕跡や気配が漂います。
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