「たまお」
撮影者は今埼玉県に住んでいるが、メディアが描く郊外の姿はネガティブなものが多い。かつて酒鬼薔薇事件が発生した時には、郊外の人工的空間が人の心を抑圧し犯罪を誘発したと言われ、また、チェーン化したショッピングモールや量販店、飲食店が並ぶ郊外の風景は、土地の持つ固有性を失い均質化した「ファスト風土」と呼ばれる。最近では、郊外に住む若者を上昇志向に乏しく内向的な「マイルドヤンキー」と呼ぶ例もある。メディアが提示するこうしたディストピアとしての郊外像は、一面の真実が含まれているかもしれないが、一方で多くの人々がそこで日々の生活を営んでおり、郊外の若者にとってはその「ファスト風土」的な景色が故郷の原風景となっているという現実を見ないことで成立しているとも言える。撮影者は、その郊外の姿をフラットな視点で捉えるべく、自分が住む埼玉の風景を背景に地元に住む10代の男子の撮影を続けている。
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